農業にウェブ技術を導入すると

 
 農業は時代から淘汰されている感がある。それは、半導体技術の進歩やウェブの進化と比較すれば明らかだ。何よりも本来食用や飼料用になっていた穀物バイオエタノール精製のために作られる事実を目の当たりにすれば、農は淘汰されているという印象は拭い去ることは出来ない。それに加え、FTAやEPAによる関税の撤廃で日本の農業は岐路に立たされていると言っても良いだろう。今こそ日本の農は進化しなければならない。
 これまでの一般的な農家のスタイルは、
 ・農協に指導してもらい、農協を通して売る
 ・農協に指導してもらい、直売所で売る
 ・自ら作物などの研究と開発をし、農協を通して売る
 ・自ら作物などを研究と開発をし、直売所で売る
であった。海外では広大な土地を管理しコストを削減できる上に、品質も向上しつつある。このままの農業のスタイルでは恐らく海外の作物には敵わないだろう。このまま日本の農業は進化せずに規模を縮小させてしまうのか。
 『フューチャリスト宣言』(ちくま新書)を読み、ピンと来たことがある。農業にウェブの技術を導入したらどのような結果を生み出すのだろうか。従来型の農家にとっては農業とウェブは全く関係が無いように感じるかもしれない。しかし、農業に関係する特定のコミュニティをウェブ上に作ればどうなるだろう。羽生善冶氏の「学習の高速道路論」とは、ウェブを活用すればある程度の知識や技術まではあっという間に習得できる、と言う理論である(*詳しくは『ウェブ進化論』にて)。つまりこの理論からすると、農業もある程度の知識や技術はあっという間に習得できると言うことになる。さらに農業コミュニティで常に自らの研究と開発を公開し、それに対する議論がなされれば農業は加速度的に進化をする。作物の売却も八百屋ショップをウェブ上に作れば、仕入元と売却先は周辺地域に限定されるが効率よく在庫が回転するのではなかろうか。
 確かに、農業とは自然が相手の産業であり、それゆえに「ああすればこうなる」論は通用しない一面を持つ。しかし、個人や農協、小さい研究グループで作物などの研究と開発を行うよりも、より大きな農業コミュニティでの研究と開発の情報共有、それに対する議論が展開されれば全国規模で農業は進化するはずだ。日本の農業は海外のそれに勝たなければならないと常々考えている。なぜなら日本は島国で生活基盤が非常に脆い。今流行の表現を使えば、農業1.0から農業2.0に進化することが日本の農業の生き残る道ではないか。いかにして海外の作物に勝つか。FTA、EPAにより関税が撤廃されるときは近い。反対抗議に出るよりも、現代農業の基盤、インフラを問い直すほうが現実味を帯びていると感じるが・・・。


フューチャリスト宣言 (ちくま新書)

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)